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amhran
ゲール語で「歌」。詩歌や句、テキストをよむところ。

ブランコ
あなたの名前は消しました
袖を通さぬままでいる古着を
仕舞い続けても仕方がないので
着ないものを捨てるように
あなたの名前を捨てました

見えていたのはセンチメントか
トリガーがあると苦しくなるので
今さらどうにもならないことを
もうどうしようもないことを
手放したいと思いました

もっとこうしていればとか
ああしていればよかったのにとか
今だからこそ言える言葉で
人は簡単に酔ってしまえる
自傷をするのはやめました

記憶はたましいの一部だから
思い出すことはあるけれど
今は今として生きてゆきたい
ブランコを揺らしているのは自分
ふわりふわりと風を切る

テーマ:詩・ことば - ジャンル:小説・文学

はじまりの詩
新雪に足を踏み出すときに
ためらうことを忘れないまま
蹂躙しようと思わないまま
白さにとけこみたいと願う

親切に足を踏み入れるとき
頭から疑うことをしないまま
あたりまえだと驕らないまま
白さに染まりたいと誓う

舞う雪のひとひらひとひらも
氷のはしらのひとつひとつも
きみやぼくという人間も
透明な水が模るもので
穢せないし穢さない
享受とはそういうものだから

閉じたように感じる季節は
開くための調音期間
ピアノからフォルテへ
アンダンテからアレグロへ
他人のタクトに振り回されても
コンマスは自分自身だ
ひるまない

毎日新しい陽がそそぐから
生きているものは息をして
目覚めては眠ってまた起きて
日々を積み重ねていこう
いくつものはじまりの朝に

テーマ:詩・ことば - ジャンル:小説・文学

自分たちは知恵を持つ獣だから、と思い込み、
ほかの獣たちとは線引きをしているけれども、
そのあわいにあるのは思いあがりと哀しみだ。

廃棄をするほど殺している。
根絶やしにするほど殺している。
自死をするほど殺している。

繁栄の道を違えてきたわたしたちは、
もはや獣の風上にも置けない存在として、
人間という生きものでいるしかないんだろう。

肥大したり千切れたりするコミュニティで、
歌をうたうよ。
言葉は後出しジャンケンなのに、
気づけば通じあえなくなっていったよ。

今でもうたい続けているよ。
いくつもの文化が生まれては死んだけれども、
原始の鼓動が息づく歌はずっと残っていくだろう。

人間の知恵や技術は確かに優れているのだろうが、
ギミックを必要としない獣たちこそ素晴らしい。
生きるだけで輝いて見える人間はそうそういない。

しなやかに走り、勇猛に戦い、
子をなし、血を繋げていく獣たちよ。
あたりまえのことができない人間を、わたしを、
責めることもしないでただただ日々を、
己を全うする命をどんなに尊いものかと思うよ。

テーマ:詩・ことば - ジャンル:小説・文学

ランドセル
おもいおもいカバンを背負って
ときには両手にも荷物を抱えて
毎日登校していたな

当時は考えなしだったけど
生きていくための矢じるしが
希望がぎゅうぎゅうに詰まってた

思えばそう
ランドセルは
たからばこでした

だから子供は嬉しいんだろう
ツヤツヤピカピカの大きなカバンを
自分に託されることが

たからものを徐々に手に入れ
形だけでも使えるようになるころに
役目を終えてひしゃげるんだ

子供が手を離さないよう
しっかりしがみついている
振り回したり振り回されたり
ほん投げられたり傷つけられたり
ときにはデコレーションされながら
何年も寄り添っている

かけがえのない
たからばこでした

テーマ:詩・ことば - ジャンル:小説・文学

共同体
ねぇ いつ死ぬかより
いつ笑うかでしょ
いつ振り向くかでしょ
ものごとにはタイミングがある
それにより別の意味になる

季節がめぐるのと一緒
巻き込まれている
生まれるまえから
わたしたちは宇宙の一員
ひとりきりではこの場にいない

共同作業? とんでもない
運命共同体とか言うけど
沈む船に乗りたくはない
宇宙をバックにつけながら
今日もまわり続ける矛盾劇

愛を知る人は寂しがり
なくしたものを探しがちだし
知らない人は焦がれるもので
擦れ違いが奏でるカノン

あじさいは褪せてもきれい
そうやって笑うあなたもきれい
装飾花のなかでいいから
どうか仲間に入れてほしい
ねぇ いつ死ぬかより
いつ咲くかだからさ

テーマ:詩・ことば - ジャンル:小説・文学

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