amhran
ゲール語で「歌」。詩歌や句、テキストをよむところ。

三題噺(バロシン)
「執事がほしいわぁ〜」
「……は?」
 キツネは唐突すぎるルビにツッコミを入れた。
 加速する異常気象のために事務所で連日酷使されているエアコンが、ため息のような風を送ってよこす。

 なんで執事、という質問に、向かいに座る少女は口を尖らせた。
「夢よ夢。キツネは憧れないの? スケジュール管理とかお嬢様呼びとか。上品なおじさまがキッチリとスーツを着込んだ姿! 白い手袋なんかしちゃったりして、お時間ですとか、かしこまりましたとか言ってくれるのよ!」
「おれは美人秘書がいい」
「そこはメイドさんでしょ!」
「どんな屋敷に住んでるんだおまえはっ」

 ルビの生活環境は、正直なにも知らないのだが。
 平日の昼間に学校へも通わず、暑いだの空腹だので人の事務所にしょっちゅう転がり込んでくる少女について、キツネはその事情を聞いていない。

「言ったな? わたしの今後の活躍に驚くなよ!」
「生涯プーじゃないのかよ」
「吉報を待たれよ」
 ハイハイ、と苦笑して呷ったコーヒーの味を覚えている。

テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学

春光 (直してみた)
青空よ瑠璃唐草の丘に春光   /掲載ページ
  ↓
春光よ瑠璃唐草の丘は空色


このほうが判りやすいのではなかろうか。
瑠璃唐草を知らない人がいるはずだし。

こんな感じで気まぐれに過去作品を直してみたりもしようかと。
もちろん自分の作品に限り、ですが。駄目なの多いからな(汗)

テーマ:俳句 - ジャンル:小説・文学

ぼくと言う名の死
無作為に拾われ捨てられるぼくはいったいなんなのだろう
恣意的に捨てられることとおなじではないのだろうか
自分以外のところで多くの意識が働いている
仕方がないかもしれないがぼくはそれを怖いと思う

声をかけあぐねたあのときにはもう運命は動いていた
少し驚いた様子のきみはぼくの知るきみではなかった
だいたい人のことなんて判るはずもないのだが
察するぐらいのことならできるしそうしようと考えた

隠れた亀裂は大きくなってそれ見たことかと具現化した
至らぬぼくは稚拙な勇気でやむを得ないと受け入れた
腹に抱えた冷たいものは今になっても凍ったままだ
きみがかち割りでもしない限りは何も変わらないだろう

テーマ:詩・ことば - ジャンル:小説・文学

Discord
さざめきに耳を塞ぎたくなる
自分の声を聞く気がするから

どうしてなのという声を

ぼくにはなにも残っていないよ
うつろに響く自分の声だけ

どうしようもないつぶやきばかり

きらめきに目を背けたくなる
自分の姿を見る気がするから

判りきっていることを

今が現実 判っているよ
でもその今を見たくないんだ

取り繕いもできぬまま

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筆跡
きみの書き文字に時間が戻るよ
今でも筆まめでいるのだろうかと
手を止め窓のそとを眺めた

危うく成り立つ均衡のうえで
金庫を抱えるきみはいつでも
とても不安で苦しかったろう

梅雨入りまえの晴天は
とてもだいじで憂鬱でもある
ぼくの心のなかに似ている

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